民法改正(2020年4月1日施行)行政書士試験への影響

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2020/07/15

民法改正(2020年4月1日施行)行政書士試験への影響

こんにちはマスオです。

2020年11月8日の行政書士試験ですが、2020年4月1日の民法改正の大きな影響を受けます。

今日は民法改正について、本年度の行政書士試験に影響が出ると思われる箇所について、徹底的に解説をします。

2020年4月1日の民法改正の全体像

2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が2020年4月1日より施行されます。

民法の中でも、契約等に関する最も基本的なルールとして「債権法」が定められており、この債権法については1896年に制定されてから約120年見直しされておらず、今回の改正でも大きなポイントとなっております。

約120年にわたる社会経済の変化への対応を図るための実質的ルールの変更にかかる部分の改正、現在の裁判や取引の実務で通用しているルールを、法律の条文上でも明確にし、読み取りやすくするの、この2点が今回の改正のポイントとなっています。

①保証人の保護に関する改正

個人が保証人になる場合に、個人の保護をより図るために、下記のような改正をすることになりました。

1.極度額の定めのない個人の根保証契約は無効に

以前は、極度額の定めがない根保証契約は有効でしたが、民法改正により、個人が根保証契約を締結する場合には、保証人が支払いの責任を負う金額の上限となる、「極度額を定めなければ、保証契約は無効となります。

(個人根保証契約の保証人の責任等)
第465条の2
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する

2.保証人の請求による債務の履行状況に関する情報提供義務

保証人の請求があったときは、債権者は保証人に対して、遅滞なく、主たる債務の元本等の不履行の有無及びこれらの残額に関する情報を提供しなければならなくなりました。

(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第458条の2
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

3.主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

債権者は、債務者が期限の利益を喪失したことを知ったときから2ヶ月以内に、保証人に対してその旨を通知しなければなりません。当該期間内に通知しなかったときは、債権者は債務者が期限の利益を喪失したときから通知するまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求できなくなりました。

(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)
第458条の3
主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
2前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3前2項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。

4.公証人による保証意思確認手続きの新設

法人や個人事業主が事業用の融資を受ける場合、その事業に関係していない親戚や友人などの第三者が容易に保証人になってしまい、多額の債務の負うケースがいまだに生じています。

そのため、個人が事業用の融資の保証人になる場合には、公証人による保証意思確認経なければ、簡単には保証人にはなれないことになりました。この意思確認の手続きを経ずになされた保証契約は無効になります。

※主債務者が法人である場合、その法人の理事、取締役、執行役や議決権の過半数を有する株主である場合は不要
※主債務者が個人である場合、主債務者の共同経営者や主債務者の現に従事している主債務者の配偶者の場合は不要

(公正証書の作成と保証の効力)
第465条の6
1.事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2.前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 保証人になろうとする者が、次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。
イ 保証契約(ロに掲げるものを除く。)
主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
ロ 根保証契約
主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日又は第四百六十五条の四第一項各号若しくは第二項各号に掲げる事由その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

二 公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。
三 保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
四 公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
3 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。

②約款(提携約款)を用いた取引に関する改正

特にインターネット上での取引が多い現在の契約では、顧客が約款をよく確認せずに契約してしまうことが多くなってしまっている状況です。そうした状況においてより個人を保護するため、信義則に反して顧客の利益を一方的に害す る不当な条項はその効果が認められなくなりました。

また、定型約款の変更は,①変更が顧客の一般の利益に適合する場合や,②変更が契約 の目的に反せず,かつ,変更に係る諸事情に照らして合理的な場合に限って認めら れます。顧客にとって必ずしも利益にならない変更については,事前にインターネッ トなどで周知をすることが必要です。

(定型約款の合意)

第548条の2

定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。

二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

第548条の3

定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。

2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

(定型約款の変更)

第548条の4

定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。

一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。

二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。

3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

4 第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。

③法定利率に関する民法改正

これまでの法定利率は、民法で5%、商法で6%と、市場の低い金利と比較しても極めて高い利率が使用されていました。法定利率は債務不履行における遅延損害金にて使用されることが多く、市場金利と比較して非常に高かった法定利率が改正されるだけでなく、下記の条文のとおり市場に合わせて自動的に適用される法定利率の制度もできました。

(法定利率)
第404条
1.利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2.法定利率は、年三パーセントとする。
3.前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4.各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5.前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

④消滅時効に関する民法改正

消滅時効に関しては、大きく一般債権に関する消滅時効の改正と、不法行為の損害賠償請求権の消滅時効の改正です。

一般債権に関する消滅時効の改正

旧民法では、債権の消滅時効の原則的な時効期間を「権利を行使することができる時」(客観的な起算点)から10年と定められ、そのうえで商行為によって生じた債権については5年間とし、その他職業別に短期間の時効期間を定めていました。

新民法については、債権者が権利を行使できる時(客観的起算点)から10年を経過したときに加えて、債権者が権利を行使することができると知った日(主観的起算点)から5年が経過したときも、債権は時効によって消滅するとされました。

※職業別の短期間の時効期間は撤廃されました。

民法第166条(債権等の消滅時効)

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前2項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

改正前民法では、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効と、不法行為の損害賠償請求権の消滅時効について、期間の統一化が図れておらず、一部不公平な対応となっていると言われていました。

一般債権(債務不履行)の損害賠償請求権について、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特則規定を設けることより、統一を図るだけでなく、より保護すべき権利として明確にしました。

第167条

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

改正前の民法では、「不法行為の時から20年間」という客観的起算点による規律は、消滅時効ではなく除斥期間だと解されており、時効に関する総則の規定の適用がなく、中断や停止等もできないことから、事案によっては、不法行為の被害者の救済が適切に図れないこともありました。

改正後の民法では、旧民法の「損害及び加害者を知った時から3年間」という主観的起算点による時効は維持しつつ、「不法行為の時から20年間」という客観的起算点による規律は、消滅時効であることを明言しました。

また、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権について,特別に権利を行使することができる期間を長くすることで、債務不履行の損害賠償請求権との統一化を図りました。

第724条

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

第724条の2

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

⑤意思能力・錯誤に関する民法改正

民法改正においては、債権法の改正に注目が集まりますが、意思能力の瑕疵「錯誤」についても重要な改正が行われました。

意思能力についての民法改正のポイント

改正前の旧民法においては、意思能力に関する規定はなく条文はありませんでした。2020年4月1日からの民法改正で明文化されることになりました。

第二節 意思能力
第3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

意思能力の瑕疵「錯誤」についての民法改正のポイント

改正前の旧民法では、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする」と規定されており、「法律行為の要素」の錯誤に当たるためには、表意者につき錯誤がなければその意思表示をしなかったであろう認められること(主観的因果関係)、通常人であっても、錯誤がなければその意思表示をしなかったであろうと認められること(客観的重要性)、同期の意思表示の内容として表示されること(同期の錯誤がある場合)、と裁判例で明らかにされていました。

今回の民法改正では、裁判例が明文化されるだけでなく、錯誤は無効主張だったものが、取消可能に変更になりました。※無効主張できるのは、意思無能力の場合だけとなりました。

第95条
  1. 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
    一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
    二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
  2. 前項第二号の規定による意思表示の取り消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
  3. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取り消しをすることができない。
    一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
    二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
  4. 第1項の規定による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

⑥賃貸借契約に関する民法改正

賃貸借に関しては、敷金、原状回復などについて、これまで明文化されてなかったものが明文化され、大幅にルール改正になりました。

敷金、原状回復以外でも非常に多くの改正がなされていますので、順番に説明していきます。

賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化

改正前民法では、建物の賃貸借契約が継続している場合に、建物の所有者が代わった場合には、その後はは誰が賃借人になるのか名文上明記されていませんでした。

そこで、改正後民法では、賃貸借の対抗要件を備えていた場合に、賃借物である不動産が譲渡されたときいは、賃貸人としての地位は原則として不動産の譲受人(新たな所有者)に移転するという規定を名文上設けられました。

第605条の3

不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第3項及び第4項の規定を準用する。

賃借人による修繕ルールの追加

改正前民法では、賃貸人が借りている建物を修繕してくれない場合など、賃借人が自分で修繕をすることができるかを定めた規定はありませんでした。

改正後民法では、賃借人による修繕の規定が追加され、どのような場合に賃借人が自分で修繕をすることができるかを名文上明確化しました。

第607条の2

賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。

賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化

賃貸借契約が終了した場合には、賃借人は、賃借物を現状(元の状態)に戻して返還しなければならない現状回復義務を負っていると解されています。また、この原状回復義務の範囲について、一般的に、通常摩耗及び経年劣化はその対象に含まれないと解されています。

改正前民法では、上記について名文上の規定がありませんでしたが、改正後の民法では名文上のルールにしたうえで、賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷について現状回復義務を負うこと、しかし、通常摩耗や経年変化については現状回復義務を負わないことを名文化して明記しました。

第621条

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

敷金に関するルールの明確化

改正前の民法では、敷金の定義や敷金返還請求権の発生時期についての名文上の規定はありませんでしたが、改正後の民法では、これまでの実務に従い、敷金を定義したうえで、判例に従い、賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金返還請求権が生じること、その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した額であることなど名文上規定しました。

第622条の2

  1. 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
    一 賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき。
    二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
  2. 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

⑦配偶者居住権(新設)について

第1028条(配偶者居住権)

被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

配偶者居住権とは、特に遺産である不動産が自宅だけの場合、配偶者が居住している不動産を相続すると、その他の現金などの不動産を相続できなくなってしまうため、生活に困窮するケースがありました。

そこで、配偶者居住権を設定・登記することで、残された配偶者が安心して自宅に住み続けるだけでなく、現金などの残された財産も相続できるが出来るようになりました。

ケーススタディー(自宅4,000万円、現金4,000万円の遺産で、相続人が配偶者と子Aだけである場合)

民法改正前は、配偶者が相続分である2分の1である自宅を相続してしまうと、現金を相続できなくなってしまい、生活に困窮するケースが多く見られました。

民法改正後は、配偶者居住権が2,000万円の価値として設定した場合、自宅である不動産の残りの価値を子Aが相続したとすると、現金の相続財産である4,000万円を配偶者と子Aでそれぞれ2,000万円で相続できるだけでなく、配偶者がなくなった後、子Aが不動産を相続することなくすべて得ることができるようになりました。(配偶者がなくなった場合、配偶者居住権は消滅するため)

配偶者居住権は、設定が出来ないケースがあり(居住不動産が被相続人と配偶者以外の人の共有であった場合)、注意が必要です。

また、配偶者居住権は譲渡ができません。

⑧自筆証言遺言のルールの緩和

第968条
  1. 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
  2. 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
  3. 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

民法第968条第1項は、自筆証書遺言をする場合には,遺言者が遺言書の全文,日付及び氏名を自書(自ら書くことをいいます。)して,これに印を押さなければならないものと定めています。

今回の改正によって新設される同条第2項によって,自筆証書によって遺言をする場合でも,例外的に,自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録(以下「財産目録」といいます。)を添付するときは,その目録については自書しなくてもよいことになります。自書によらない財産目録を添付する場合には,遺言者は、その財産目録の各頁に署名押印をしなければならないこととされています。

⑨特別養子縁組制度の改正

第817条の5

第817条の2に規定する請求の時に15歳に達している者は,養子となることができない。特別養子縁組が成立するまでに18歳に達した者についても,同様とする。

2 前項前段の規定は,養子となる者が15歳に達する前から引き続き養親となる者 に監護されている場合において,15歳に達するまでに第817条の2に規定する請 求がされなかったことについてやむを得ない事由があるときは,適用しない。

3 養子となる者が 15 歳に達している場合においては,特別養子縁組の成立には,その者の同意がなければならない

特別養子縁組における養子の年齢の上限を、6歳未満から原則15歳未満に引き上げるなどの変更がおこなわれています

2020年10月5日 配偶者居住権を追加
2020年11月5日 自筆証言遺言のルールの緩和、特別養子縁組制度の改正を追加

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マスオ

俺の行政書士試験管理人。行政書士の学習を2020年5月より学習。宅建に1か月で合格したマスオが行政書士試験に6か月で合格できるのか。

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